「涼宮ハルヒ」シリーズの最新刊『涼宮ハルヒの劇場』が発売されたので読みました。
…………難しい。
いや、面白くなかったわけじゃない。でも量子論とギリシャ神話という「重要そうだけど正直ざっくりとしか知らん分野」が文理両方から攻めてくるんですもの。『劇場』自体は2時間半で読破したものの、そのあと量子テレポーテーションやトロイア戦争について調べて、嚙み砕いて理解するのに5日ほどかかった。
ちょっと知識とかを整理するために、誰かと話がしたい。それもけっこう本格的に。
うーん、ハルヒ知ってて、『劇場』読んでるかネタバレ気にしないかのどっちかで、量子論やギリシャ神話の知識があって、時間とか気にせず会話できる人どっかにいないか。
あ、そんな人間はいないけどAIならいるな。ChatGPTとか。
前提知識の確認
じゃあさっそく……と言いたいところだが、いったんGPTがどこまでハルヒシリーズを知ってるか確認しよう。それによって質問の仕方も変わってくる。
あれ、今カットオフ(最終学習地点)ってどこらへんだ?
(※以下、ChatGPTの回答は2024年12月時点で、筆者のアカウントからの質問により得られたものです。モデルはGPT-4oを使用しています。必要に応じ、抜粋した一部を掲載することもあります)
1年ほど前か。まあ、ハルヒも歴史が長い作品だから、それなりに文献や情報も溜まってるだろう。
本題へ移る。
ChatGPTが知っている情報
シリーズ概要
谷川流によるライトノベルシリーズで、初作は『涼宮ハルヒの憂鬱』。主人公である平凡な高校生「キョン」が涼宮ハルヒに巻き込まれる形で、宇宙人、未来人、超能力者といった非日常的な存在が関わる事件に直面する物語です。シリーズは、ハルヒが設立した「SOS団」を中心に展開し、日常と非日常が入り混じったユーモラスかつSF的な展開が特徴です。
主要な登場人物
- 涼宮ハルヒ
好奇心旺盛でエキセントリックな女子高生。世界を改変する能力を持つが、その自覚はない。 - キョン
語り手兼主人公で、SOS団の実質的なまとめ役。常識的な性格でハルヒの突飛な行動に振り回される。 - 長門有希
無口な宇宙人で、情報統合思念体の端末。読書好きで冷静沈着。 - 朝比奈みくる
未来から来たタイムトラベラー。SOS団では「マスコット」的な存在。 - 古泉一樹
超能力者で、秘密結社の一員。常に冷静で物腰柔らか。
あらすじのポイント
物語はハルヒの興味本位で始まる活動やイベントを通じ、登場人物たちが非日常的な事件に巻き込まれる形で進行します。一方で、ハルヒの能力が暴走すると世界が危機に陥るため、SOS団のメンバーはハルヒの機嫌を取る必要があります。作品は日常とSFの絶妙なバランスで描かれ、コメディ、ミステリー、哲学的テーマも含まれます。
おお、コンパクトにまとまってる。ハルシネーション(AIがしれっと大噓つくこと)も見たところ問題なさそうだ。
これぐらい知ってれば前提知識はある程度省けるだろう。
議論開始
さすがに全文ぶっこんで解析というわけにもいかないので、ストーリーの要約などを与えながら質問していく。
さすがAI。読者の大半が面食らうであろう設定もわりとすんなり受け入れてるな。もう少し踏み込む。
「しかし長門さん、事態を解決した結果、現実世界で僕たちが二人ずつ存在することにはならないというのは確実ですか?」
谷川流『涼宮ハルヒの劇場』 p254-255
「フェルミオン」
「……ええと、排他原理を当てはめることで(r)の僕たちと(f)の僕たちは同じ場所に同時に存在できなくなり、いずれにせよ量子状態が解除される。僕たちの肉体を構成する素粒子はだいたいフェルミオンだから……という理屈でしょうか?」
おや、本文とかなり近しいことを言ってねえか?俺はここで20分ぐらいつまづいたのに。
じゃあ、ギリシャ神話の知識のほうはどうだろう。
おかげで現在のハルヒたちがどの女神の役を割り振られているのかがおぼろげに理解できた。なるほどの配役で、よくまあこれほどピッタリ合う女神がギリシャ神話にいたものだと感心する。
谷川流『涼宮ハルヒの劇場』 p216
なんてこった。三人娘と三柱の特徴の対比に気付いている。
ちょっと予想以上だぞ。
調子が上がってきたのでまだまだ情報や疑問を投げかけてみる。粒子をぶつけて観測している「天蓋領域」は『分裂』に出てくる周防の親玉であること。白髪の老人の役割について。
古泉は実際アポロンに近いのかヘルメスに近いのか。じゃあキョンはギリシャ神話でいうと誰なのか。
老人がフクロウになること。最後の観測にキョンの妹が選ばれること。
どんな指示を入れてもすぐにレスポンスが来るのでだんだん楽しくなってきた。もちろん「ん?」と思う部分や論理の飛躍もたまに出てくるが、びっくりするほどのデタラメは(たぶん)ない。
そうして返答を眺めているうち、ふと「観測」「観察」という言葉がやたらに出てくることに気づいた。
ということで、GPTくんがまとめてくれたのがこちら。
ChatGPT著・『劇場』における「観測」
観測が現実を確定する
劇中では、虚構(f)と現実(r)が重ね合わさった量子もつれのような状態が描かれます。この状況を収束させるのは「観測」です。
量子論において、観測が波動関数を収束させて物質の状態を確定させるのと同様、物語内でも観測が虚構を現実に変える決定的な行為となります。
- 老人(ゼウス)の観測:
天蓋領域の観測者である老人がフクロウの姿で現実に干渉し、虚構を現実に収束させたのは、このテーマの最も直接的な表現です。 - キョンの妹の観測:
最終的に現実世界における観測者として選ばれたのがキョンの妹であることは、観測行為に必要なのが「純粋な視点」であることを示唆しています。無邪気な子供の目は、虚構と現実のどちらにも偏らない最適な観測者となります。
観測者としてのSOS団
SOS団自体も、物語の中で重要な観測者の役割を果たしています。
- 長門の観測:
長門は情報統合思念体から派遣され、ハルヒや現象の観測を行うために存在しています。その冷静で客観的な視点が物語の進行を支える一方で、彼女が力を解放し虚構に干渉することも、観測行為の一環として描かれています。 - キョンの立ち位置:
キョンは物語の「語り手」であり、「物語を観測し記述する」役割を担っています。彼の視点を通じて読者は虚構と現実の境界を目撃し、物語全体が彼の観測を媒介として成り立っています。 - ハルヒの創造と観測:
ハルヒは現実を改変する力を持ちながら、その力が自分自身の意識下にないため、無意識に観測者として機能します。彼女が作り出す非日常的な出来事は、観測によって初めて形を成します。
観測のメタ的な解釈
この作品では、「観測」というテーマが物語の内外で二重に機能しています。
- 読者による観測:
物語の展開を観測しているのは読者自身でもあります。SOS団や天蓋領域と同様、読者もまた「虚構」を観測し、それを自身の中で「現実」に変換しています。この仕組み自体が、物語の構造に「観測者としての読者」を取り込むメタ的な仕掛けと考えられます。 - 虚構と現実の二重性:
SOS団が虚構(f)の世界に迷い込みながらも、それが現実世界と不可分であることが描かれるのは、読者が物語という「虚構」を受け入れる行為そのものと重なります。物語は観測されることで初めて「現実味」を持ち、消費されるのです。
観測と自由意志
観測は物語の収束を生み出す行為であり、同時に自由意志の行使でもあります。
- 観測による選択:
SOS団が各世界で冒険し、それぞれの選択を重ねていくことは、観測が現実を形作る自由意志の行使を象徴しています。最終的に虚構から現実に収束する過程も、観測が一つの選択を確定させる行為に等しいと言えます。 - 観測の創造的側面:
長門や老人、キョンの妹による観測は、単なる現実の受容ではなく、虚構の中から新しい現実を創造するプロセスでもあります。この創造性が物語の中核となっています。
結論
『涼宮ハルヒの劇場』における「観測」というテーマは、量子論的な哲学とキャラクターの行動原理、さらには読者の物語体験そのものを結びつける非常に奥深い要素です。観測は単に虚構を現実に収束させるだけでなく、自由意志、創造性、そして物語の存在そのものを成立させる鍵として機能しています。
このテーマを通じて、作品は読者に「私たちが観測する世界はどれだけ現実であり、どれだけ虚構なのか」という問いを投げかけています。つまり、物語そのものが観測者である私たちの現実にどのように影響を与えるのかを暗示し、私たちの現実認識を揺さぶる試みと言えるでしょう。
……なかなかの文量で返してきた。すごいな、君。
そりゃ意地悪な目線で見ると、「『読者もまたこの虚構の世界を観測しているのだ』なんてベタな考察、ちょっと考えりゃAIにもわかるか」「自由意志うんぬんのところは少し言い過ぎでねえか」とかツッコミたくなる。しかし、ChatGPT黎明期のなんか言ってるようで何も言ってない回答からするとけっこう頑張っていると個人的には思う。
俺の推しについて聞いてくれ
少し話は脱線するが、僕は中学生のときにハルヒシリーズに出会って以来、未だに朝比奈みくるちゃんが一番好きなキャラクターである。「シリーズの中では」じゃなくて、この世のキャラクター全ての中で。
でもみくるちゃん今回出番少ないんだよな。飯食うところとかかわいかったけど。
あ、それも一応聞いてみるか。
すると、こう返してきた。
おう!!分かるかい!話が合うじゃないか!!
んで、俺が引用したシーンについてこう解説してくれた。
素晴らしい!!!!!!!
……失礼しました。あまりに丁寧に良さを語ってくれたのでテンションが上がってしまった。オタクは推しを褒められるのに弱い。
対話を終えて
今までChatGPTはちょくちょくいじってはいたが、本格的に対話することは少なかった。クイズや数学の問題を試しに入れて、解けたり大間違いしたりするのを「おもしれえな」と眺めるくらい。
今回、小説読解の補助に使ってみたら、少し前のバージョンより性能が二段階くらい上がっているように感じた。もちろん発展途中だから「真相や隠された設定を正確に考察する」なんてことはできっこないが、掘り下げたい周辺知識を聞いたりするにはすごくいい相棒かもしれない。
実際、最上位モデルの「o1」を試すために月20ドルのプランなら入ってもいいかなと心が動いている。
……でもやっぱりちょっと高いな。いま円安だし。
GPT-4 Turbo(または「GPT-4o」とも呼ばれる)のカットオフは2023年10月です。この時点までの情報を学習していますが、それ以降の出来事や情報については、最新のデータを調べる必要があります。もし新しい情報が必要な場合は、「web」ツールを使って最新の情報を取得することもできますので、ぜひお知らせください!