EOT玉砕記

レポート・感想

気付けば、生大喜利を2年ほどできていなかった。

重点措置も明けた4月、大喜利大会「EOT」の第8章が開催されることを知った。関東では今一番勢いのある大会だろう。

久しぶりにあの空気を感じたい。エントリー開始と共に必要事項を送信し、数分で埋まった参加者枠の中に滑り込んだ。

開演前、高円寺駅でJ.ナカノさんの『アマチュア大喜利プレイヤー列伝』頒布作業を手伝う。

アマチュア大喜利という文化のために、ちゃんと重要な人達に話を聞いて活字で残すというのはめちゃくちゃ大事なことですごいよなー、と思う。

5、6分ほど歩いてStudioK到着。久しぶりに会う方々に挨拶する一方で、EOTの過去動画や「大喜る人たち」で一方的に知っている人もいて密かに「あ、あの人だ」と思う。

予選は各ブロック3問×3分、審査員の挙手によって続行(0ポイント)、有効(1ポイント)、技あり(2ポイント)、一本(5ポイント)が回答ごとに入る。

前半ブロックでは、ウォーミングアップ代わりに自分の中でもある程度想定回答を出しながら観覧した。レベルの高さに笑いながら心の中で唸る。

そしてHブロック、自分の出番が来た。

第1問:「あんたのせいでトマト投げ祭が台無しだ!」と言われてしまった理由

スペインに伝わる「トマティーナ」ことトマト投げ祭、知ってはいるが、深く考えたことはない題材だった。

落ち着いて要素を抜き出して連想する。「トマト」、赤い。ケチャップ。カゴメ。以上。

出てこない。久々の舞台での緊張か、それとも衰えか?多分両方だ。

結局良い回答は出せず。まあ、お題の相性というのもあるだろうと切り替えて次に行く。まだ挽回はできるはずだ。そう思っていた。

第2問:ヤクザに捕まって全裸で正座させられてるピエロ「○○○」

今度はやや込み入っている上にセリフ縛りだ。

「やってません!」

色んな声で赤黄色さんが回答して大ウケする。シンプルな答えを堂々と出すのはすごい勇気だ。しばらくしてまた回答が出た。

「やりました!」

あ、天丼という手があったか。会場がウケる。焦る。とりあえず自分も絞り出す。小笑い。

また赤黄色さんが回答する。

「やってまサーカス!」

やってま、サーカス?

客席がめちゃくちゃに笑う。

届く気がしない。
160kmの消える魔球が飛び交う中、自分は100kmのへっぽこカーブしか投げられない。

苦し紛れに自分も「…やったんですか?」と被せてみようと、ボードに書いて手を挙げる。自分の前に鉛のような銀さんが答えた。

「やってまサーカス!」

まんま!?被せるとかでもなく、まんま!?

「おいマジか」と「この空気は勝てないかもしれない」が入り混じった目

そのあと、「やったんですか?」を出した。ウケない。当たり前だ。もう「やってまサーカス」が2人から出るところまで行ってんだから。

第3問:こんな所に駐車してる車はたぶんこんなことを考えてる

戦意がかなり削がれてしまっている中で、今度のお題は場所の要素を自分で足さなければいけない。今のメンタルでは正直負荷が大きい。

途中、ボードに「フーターズ」とだけ書いて、15秒ほど考えて消した。もう、脳の片隅に転がっていたおもしろワードを書くしかできなかった。

結果、12答して6ポイント。恐ろしくコスパが悪い。加点式は数を稼ぐことが大事というのは定説だが、ゼロは100個積み上げてもゼロなのだ。

本戦は自分が出ていたということを忘れるほど、さらに高レベルな戦いだった。

中でも準決勝、過去2度の優勝を誇る六角電波さんと、予選から怒涛の天丼回答で勝ち抜いてきた赤黄色さんの一戦。そこでの赤黄色さんの回答。

お題「とある女子校のフードファイター部を舞台にした日常アニメ『たべすぎっ!』のワンシーン」
回答「水着を食べる回がある」

大ウケする会場。「水着回ってそういうのじゃねーよ!」と叫ぶ羊狩りさん。
腹筋がつりそうになった。なんだよ、まっとうにやってもめちゃくちゃ強いのかよ。そりゃ勝てねえよ。

王者の座はこういう人に与えられるのだ、とただただ見せつけられた。


EOTでは運営の星野流人さんのnoteに、得点などのデータベースが残る。

第8章予選後半35位(35人中)、予選通算70位(70人中)。
獲得一本、0。
通算得点率(得点/回答数)、0.50。

数字が冷静に「お前、ひどすぎ」と事実を伝えてくる。

自分はコロナ渦の間、ネット大喜利やスプレッドシート大喜利に数えるほどしか参加していない。その一方で、ほかの大喜利プレイヤーは色々な形で場数を積んできた。

怠けた者が、ただ負けた。

大喜利の大会が終わった後、「あの人すごかったね」と話題になることは多いが、「あの人スベってたなー」と語る性格悪い人なんてそうそういないのは分かっている。ただ、機会の少ない関東での大喜利で、初めて会う人に最悪の第一印象を与えてしまったのが悔しい。

帰り道、関西遠征組のすり身さんと「関東はとにかく層が厚い」という話になった。単純にプレイヤー人口が多いし、大喜利会やプロと触れ合うライブもたくさんある。
倒さなきゃいけない強い相手が、多すぎる。

強くなりたい、と初めて心から思った。