さて、明日22日はいよいよ参院選公示日である。選挙好きとしては始まる前に一度情報をまとめておきたいので、備忘録代わりに記事にしておく。選挙戦とともに随時更新していきます。
ちなみにマニアの偏った目線でしか書いてないので、ちゃんと政策や人となりなどを見たいという人はYahoo!とかNHKとか選挙ドットコムとかを見てください。
比例区
タレント・著名人系
比例代表が個人名投票可能・全国区である参院選はタレント候補が多くなることでも知られる。
自民党からは『ラブひな』『魔法先生ネギま!』などで知られる漫画家の赤松健氏。かねてから山田太郎参議院議員と共に表現規制関連で政治活動をしてきたが、山田氏のように「アニメ・漫画票」を集められるか注目。
日本維新の会は歌手の中条きよし氏、元マラソン選手の松野明美氏、元プロ野球選手(ヤクルト)の青島健太氏、元都知事の猪瀬直樹氏などを擁立。去年の衆院選では躍進したものの最近は失言・スキャンダルも目立つ維新、知名度の高い候補で比例票獲得を狙う。個人的には松野氏の街頭演説がどんな感じかが気になる。
れいわ新選組からは浅草キッド・水道橋博士氏。維新・松井代表から訴えられたことをきっかけにスラップ訴訟(金銭・時間の消費を目的にした嫌がらせ訴訟)規制を掲げる。
NHK党は暴露YouTuber「ガーシー」こと東谷義和氏、ニコ生黎明期の有名生主「横山緑」こと久保田学氏、ネットサービス「FC2」創業者の高橋理洋氏とインターネットのディープな人材を擁立。高橋氏はなんと国際海空港手配中の出馬となる。
保守系諸派が乱立
今回の比例区は保守系の政治団体がやたらに多い。中でも注目されているのが参政党だ。
2020年「投票したい政党がないから自分たちで作る」をモットーに、保守派の論客らが中心になって結党された参政党。ここ最近じわじわと支持を広げ、現在党員は5万人以上。今回が初の国政選挙だが、45選挙区全てに候補者を擁立した。一方、最近は反ワクチン・反マスク系の主張も多く、一部のウォッチャーからも色んな意味で注目されている。
情勢調査では「比例で1議席獲得の可能性」と報じているところも。れいわ・NHK党のようなダークホースになるか。
また、2020年の衆院選は出馬を取りやめた幸福実現党も今回は出馬。極右系では日本第一党・新党くにもりのほか、維新政党・新風が2007年以来15年ぶりの比例参戦。
謎の党「ごぼうの党」
ビッグネームが支援するが、何者だ
そんな中、ひっそりとネットに出だしたのが「ごぼうの党」である。6月に設立されると、芸能人・著名人がごぼうの画像や写真をアップする形で支援を表明した。
●ごぼうの党支援を表明した主な人物
山田孝之、Taka(ONE OK ROCK)、山下智久、GACKT、田村淳、宮迫博之、ヒカル(YouTuber)(※順不同、敬称略)
支援者はガーシーチャンネルで名前が出た人物が多いが、東谷氏いわく「敵でも味方でもない」とのこと。
東谷氏は「ボクも全然知らんかった。オレに対する敵対心があるとかじゃないと思ってるし、オレの味方でもない。オレからしたら、ああお互い頑張りましょうという相手やと思っています」と語った。
ガーシーこと東谷義和氏 謎の新政党〝ごぼうの党〟に言及…仕掛け人が「誰か知っている」 | 東スポWeb
このごぼうの党、とにかく情報が少ない。ホームページでは「党首」nayuta氏が動画を出しているが、VtuberのようなCGキャラクター。立ち上げた人物は有名実業家との噂もあるがはっきりしない。
公式サイトにも具体的な政策はなく「一番大切なものは何なのかを考えていたら笑顔でした」とざっくりした理念だけ。何より、公示日前日の6月21日でも、立候補予定者が1人も明らかになっていなかった。
一体誰が出るのか、はたまた誰も出ないのか…という状況だった。
やっぱり情報が少ない
そんな中21日の夜にヒカル氏がアップロードした動画で、実業家の奥野卓志氏が立ち上げ人であることが明らかになった。高級クラブ「銀座一徳」のオーナーで、ヒカル氏が誕生日にホストの一日体験をした動画では3200万円をお祝いに使ったという人物だ。
党首のnayuta氏や、『鬼滅の刃』の鱗滝左近次のコスプレでごぼうの党をアピールしていたアカウント「うろこぱいせん」の正体も奥野氏。……「エンターテインメントを守る」とホームページにあるけど、集英社や吾峠先生を敵に回してる気がするぞ。
ちなみに2014年の衆院選では、デーモン閣下のコスプレで応援演説をした支援者に閣下本人が怒ったという事例があります。
そして公示日、11名が比例区で立候補した。
名簿を見てみたが、奥野氏を始めとして会社経営者、会社員、コンサルタント、社労士と全員知名度はゼロに近い。これだけ芸能界にパイプがあるんだからタレント候補の一人もサプライズで出るかと思いきや、全然知らない人ばかり出てきた。
しかし22日23時の時点で、相変わらず公式サイト・Twitterを見ても具体的な政策・公約、立候補者の情報、演説日程などが一つも書いていない。「ごぼうの党について調べてみました!」というアフィリエイト全振りのブログのほうがまだ詳しい。
今までいろんな政治団体のサイトを覗いてきたが、ここまで選挙に関する情報が得られないのは初めてだ。
あるのは「真実・愛・笑顔をテーマに面白い投稿をして友達2人にバトンを渡して下さい」という「ごぼうチャレンジ」の告知や、ボランティア・「ごぼうダンサーズ」の募集ぐらいだ。そのダンサーズはどの演説会場で踊るんだよ!
(2022.06.28追記)
さすがに演説日程は公開されるようになった。23日の初街頭演説では鱗滝さん姿の奥野氏と、なぜかボブ・サップ氏、ピーター・アーツ氏が応援に駆け付けた。なんちゅう人選だ。
広島選挙区
これまでの経緯
僕の地元である広島選挙区は定数2。2004年以降は自民党と民主党や民進党の野党第一党で1議席ずつ分け合うのが安定の無風区であり、正直選挙マニアとしてはあまり面白くなかったというのが正直なところである。
それが一変したのが2019年。自民党ベテランの溝手顕正氏が盤石かと思いきや、自民党本部が「2議席独占イケるだろ」という方針で、河井克行衆議院議員の妻で広島県議の河井案里氏を推薦。「票が食い合う」と県連が反発し、事実上の分裂選挙に。
一方、「自民独占はまずい」と野党も黙ってはいなかった。立憲・国民・社民・新社会党と、非共産系野党の広島支部が政治団体「結集ひろしま」を設立。国民民主党(旧)の森本氏もあえて無所属で立候補し、他党からの支援を受けた。
結果は森本氏・河井氏が当選し、溝手氏は涙を飲んだ。ところがその3ヶ月後、みなさんご存じの通り河井夫妻の大規模買収が報じられる。
河井氏の当選無効に伴う2021年の補欠選挙では、元アナウンサーの宮口治子氏が結集ひろしまから立候補し、自民党の西田英範氏らを破る。その結果、岸田総理を輩出した自民王国にもかかわらず、2025年改選の議員は森本氏・宮口氏と野党系が独占。まさに「二兎を追う者は一兎をも得ず」という結果となった。
今回の顔ぶれ
2022年参議院選挙広島選挙区・立候補予定者(届出順)
浅井千晴(あさい・ちはる)45歳・参政党・新人
渡辺敏光(わたなべ・としみつ)38歳・NHK党・新人
森川央(もりかわ・ひさし)46歳・日本維新の会・新人
宮沢洋一(みやざわ・よういち)72歳・自民党(公明推薦)・現職
産原稔文(うぶはら・としふみ)54歳・無所属・新人
三上絵里(みかみ・えり)52歳・無所属(立憲・国民・社民推薦)・新人
中村考江(なかむら・たかえ)36歳・共産党・新人
玉田憲勲(たまだ・のりたか)64歳・無所属・新人
猪飼規之(いかい・のりゆき)48歳・NHK党・新人
野村昌央(のむら・まさてる)39歳・幸福実現党・新人
今回は過去最多の10名が立候補予定と混戦模様。
自民・宮沢氏は衆院3期・参院2期のベテラン。広島は岸田総理の地元ということで内閣支持率も全国トップ(選挙ドットコム・2022年5月調べ)、ここは盤石か。
野党は現職で元国民民主党の柳田氏が引退を表明し、結集ひろしま系(立憲・国民・社民・新社会・連合)推薦で三上氏が立候補。宮口氏に続きこちらも元アナウンサー。一方、共産党は独自候補の中村氏を擁立した。
維新は元京都市議の森川氏を擁立。躍進予想も多い維新だが、実は京都市議時代、事務所工事費の二重計上問題で市議会から問責決議・辞職勧告決議を受けた過去が。この点がどう響くか。参政党は会社代表の浅井氏を擁立。幸福実現党は野村氏が2017年の衆院選以来5年ぶりの立候補。
さきほど2019年の参院選で自民が2名擁立した顛末を書いたが、NHK党は「政党要件のために比例で2%取るための客寄せパンダでええんじゃ」とばかりに2名擁立。
歯科医師の渡辺氏は「NHKと歯周病をぶっ壊す!」がキャッチフレーズ。猪飼氏は「開運アドバイザー・JJ」「ラジオパーソナリティ・池目院池輝(いけめいん・いけてる)」など多くの名義を持つ。
しかし、渡辺氏ポスターの「私の当選は無理です。しかし、1票で250円の政党助成金がNHK党に交付されます」というバカ正直な訴えがすごいな。
無所属では、玉田氏が国政6度目の挑戦。「記号化された愚民」「おバカな有権者たち」など辛口な主張を続けてきた玉田氏だが、今回は「政党選挙を廃止しないと、25年後に人類は滅亡する」という持論を訴える。
マツダ社員の産原氏も初出馬。会社に休みを取りながらの選挙戦で、年金制度改革を中心とした公約を掲げる。
その他
東京選挙区
6人区の東京、こちらも34人立候補と激戦。
自民党は元おニャン子クラブの生稲晃子氏、立憲民主党からは蓮舫氏、れいわ新選組からは衆議院から鞍替えの山本太郎代表と有名候補が多い。(ちなみに、NHK党の比例では同姓同名の「山本太郎」氏が立候補しているのでご注意を)
2016年の参院選ではスキャンダルで出馬を取りやめた作家の乙武洋匡氏も、無所属で立候補する。個人的にはマック赤坂氏の後継者であるスマイル党・込山洋氏、全裸ポスター・政見放送音声カットなど何かとお騒がせの後藤輝樹氏も注目。
神奈川選挙区
神奈川県は定数4ですが、昨年、維新・松沢成文氏が横浜市長選に出馬のため辞職し、欠員が1名出た状態。
そこで、通常選挙と補欠選挙を同時に行う「合併選挙」が参院選では30年ぶりに行われることに。
得票数1~4位で当選した人は通常の任期6年となるが、5位が松沢氏の任期を引き継ぐため半分の3年。ただ受かるだけではなく「上位4名に入る」ことも求められるかなり複雑な選挙戦に。
自民・立憲ともに2名ずつ、NHK党に至っては4名擁立したほか、松沢氏も改めて立候補。過去最多の22名が争う。
零票確認
今回は初めて零票確認に行ってきました。詳しくは以下の記事で。
【7/14追記】選挙結果
さて、投票日2日前に安倍元首相が銃撃されるという前代未聞の事件が起こった中での参院選。比例・広島の結果をざっと書いていきます。
比例代表
「与党圧勝」と称される今回の参院選だったが、実は比例では自民・公明ともに1議席減。そんな中で赤松氏が支持団体なしにも関わらず、約52万8千票を集めトップ当選。「日本最大の集票マシーン」とも言われる全国郵便局長会が支援した長谷川氏の約41万4千票を上回った。
立憲は7議席をキープ、共産は2議席減で3議席、国民は1議席減で3議席と野党が苦戦する中、維新は5議席増やして8議席と躍進。多くの著名候補が得票に貢献した。れいわも2議席獲得し、重度障害者の天畠氏(特定枠)・浅草キッドの水道橋氏が当選。
NHK党は1議席を獲得しなんとガーシー氏が当選、今後の暴露はどこへ向かうか。得票率も2.4%でアピールしていた政党助成金も増額見込みに。自ら「崖っぷち」とアピールしていた社民党も1議席・得票率2.4%を獲得し政党要件をなんとか死守した。
そんなNHK党・社民党を上回る得票率3.3%で参政党が1議席獲得。ネット中心の活動がハマり、諸派から国政政党へランクアップした。今後は反ワクチン・オーガニック推進などの独自政策が支持率へどう影響するかも注目。
一方、ごぼうの党は議席獲得なし。選挙戦後半では「大学生のスマホ無償化」「出産手当500万円」など具体的な政策も出してきたが、さすがに出遅れが響いた。
幸福実現党は9度目の国政選挙だったが、初戦のごぼうに得票率で負け。実は地方選挙でそこそこ勝っているが、国政の壁は厚いか。第一党・くにもり・新風の極右3党も、参政党に票を奪われた影響もあってか、議席獲得ならず。
広島選挙区
今回は自民・宮沢氏、野党系・三上氏が当選と、再び与野党が分け合う無風選挙に。投票率も46.79%と全国の中でもかなり低かった。
が、そんな世間の空気はお構いなしに、僕は街頭演説や事務所を冷やかしに回っていた。
そんな中、参政党・浅井氏の街頭演説に行く機会が。「ネットでは話題だけど実際どうなんだろ」と本通商店街入口へ。
比例で今回当選した党事務局長・神谷氏が応援に来るとあって、演説開始の10分前からかなりの人が。屋外で距離があればマスクを外しても良い機会が増えたとはいえ、聴衆の人々のノーマスク率は高い。なるべく距離を取ったり、一ヶ所に留まらないようにしながら写真を撮影する。
全体的に集まっている人々の熱気がすごい。神谷氏が日本の教育の問題点について語り、「そうですよね、皆さん!」と呼びかけると、「そうだー!」という掛け声と大拍手。
「これ、比例で1議席は十分あり得るぞ…」と思いながら演説会場を後にした。